デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

馬車に揺られながら、桜ははっと気づいた。

「シュリさん、外はダメです。私、髪を隠すのを持ってない」

フードの付いたケープは部屋だ。まさかシュリと外出をするとは思わなくて。

だがシュリはにこっと笑った。

「あぁ、俺のマント貸してやるよ。フードも付いてる」

パチン、と留金を外して、夏用の薄手のマントを桜に手渡した。

「王様のお許しなしに出ちゃって、大丈夫かな…」

「それも、今日俺が謁見したときに許してもらった。明日の午前中と、明日のこの時間も」

「あ、そうなんですね」

ホッとして桜が息をついたとき、馬車が王宮の門に到着した。
見るとシュリの愛馬が繋がれて、おとなしく主人の帰りを待っていた。

マントをはおり、久しぶりに青紫の鼻をなでてやると、嬉しそうに小さく首を振った。
あの旅の再現のようなその光景に、シュリは自然と笑顔になる。

「よし、行こうぜ」

桜を促し、王宮の門を出る。
林を抜け、堀を渡ったら、市街地だ。

例によって、堀にかかる橋の門番に止められた。
シュリが武官の紋章を見せると、衛兵はうなずいた。ちら、と桜を見る。

「そちらの女性は」

「ああ、俺の連れだ。王にも許しは」

「は、妹御ですね。どうぞ」