デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

ぎゅっと唇を引き結んで、カナンは自分の仕事部屋に戻った。

一口茶を飲んで、タン、とグラスを盆に置いた。

(別に、分かっていたことだ。あの二人の武官が、桜に会いに来るのは)

けれど、いざ嬉しそうにシュリに駆け寄る桜を見たら。愛おしそうに見つめるシュリの表情を見たら。

醜い気持ちがあふれて、どうしようもない。

毎回こんな思いを味わわなければならないのか。

王との時間をじっと待つのも、日に日に苦しくなっていくのに。

いっそのこと、あの時。
桜が媚薬を飲んでしまった時に、綺麗事を言わずに、自分のものにしておけばよかった。

そんなことを思う自分への嫌悪感に、かたく目をつぶった。

今日か明日か、きっとあの赤髪の武官は、桜に自分の思いを伝えるに違いない。
そして、あのグレーの髪の武官も。

桜を好きになる前の自分に戻れたら、楽だろうか。

彼女を『魔』のように醜悪な女だと思っていたあの時に戻れたら。

そっと、目を開ける。揺れる緑の瞳がじっと自分の手を見た。

無理だ。
あんな、胸がいっぱいになるような愛しさと、彼女に触れたときの幸福感を知ってしまったら。

無理やり、仕事机に向かう。

とても集中できそうになかった。