デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

昼食を済ませて、『食事の後はリップを直せ』というシディの言葉を思い出し、のそのそとバニティからリップを取り出した。

ご丁寧に、かわいい手鏡まで入っている。

つけすぎないように控えめに引いて、リップをしまった。

(……面倒くさい……)

若い女性として終わってる、と思いながらも、その思いを止められない。

しかし、このままサボりつづけてシディにそれがバレたら、本当にチャーシューにされるかもしれない。

(慣れるしかないか…)

ガックリとうなだれたところに、戸が叩かれた。

「はい」

返事をすると、カナンが顔を出した。

「お召だ、行こう」

言いながら、桜を見て目を丸くした。そして、少し顔を赤くしてパッと横を向く。

「お前…何でそんなめかしこんでんだ」

「めか……今日衣の司に行ったじゃない。だからだよ。この間もそうだったでしょ」

「……服、もらいに行くだけじゃないのか」

緑の瞳を、軽く睨むようにこちらに向けた。

「ちょっと…色々ね。…あっ、もしかして、変?」

シディが見ていたとは言え、このメイクは自分でしたものだ。少し慌てて顔に手を当てた。

「へ…変じゃ…ない」

『かわいい、似合っている』の一言がなかなか言えない。

そうとは知らず、それに安心した桜はソファから立ち上がった。