デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~


二人がキトニの街に着いたのは、その日の夕暮れ時だった。

探す者がこの街のどこにいるか見当がつかないので、とりあえず街の中央部に宿をとった。

「良かったな、日が暮れる前に着いて」

のん気に馬をつなぐシュリに、アスナイは唇の片方を持ち上げて笑いかける。

「本当は、午後イチに着くはずだったんだがな」

ヤブヘビだったか。シュリがそう気づいて首をすくめたところに、宿の主人がいそいそとやってきた。

「これはこれは、王都武官様。ようこそお越しで」

痩せぎすの小男で、顔の表面には笑みを絶やさない。

「1~2泊、世話になる」

アスナイが金貨を一枚、しわの寄った手に握らせた。

「ほ。…どうぞどうぞ!いくらでも。よい店もご紹介できますよ。キトニの街の楽しみは、夜が真骨頂ですからねえ」

主人がニッコリと笑みを深くして、二人を部屋へといざなった。