誰にも会わずに引きこもらないといけないかもしれない…と思っていると、戸が叩かれた。

「失礼いたします」

フラウとルネが、朝餉を持ってきた。

「ありがとうございます」

二人を見た桜はふと、ワンピースのデザインが少し変わっているのに気付いた。

七分袖のざっくりとしたものから、薄手のノースリーブになっている。

「ワンピース、変わったんですね」

桜が言うと、ルネがうなずいた。

「ええ、もうそろそろ雨暑期ですから。今日から宮中は衣替えですの」

「そっか……私もシディさんに夏のワンピース、借りないといけないかな」

明日、お願いしてみよう。

「あら!桜様、シディ統括長とお知り合いですの!?」

フラウがパッと目を輝かせて言った。

「はい、まあ……着るものをお借りしてるんです。明日も会いに行こうかと」

「ああ、道理で桜様のお召し物は素敵なんですのね。あの美のカリスマが直々に選んでくださったのなら」

美のカリスマ。

(うーん、しっくりくる…)

くすっと笑いながら、桜は言った。

「ニキビが治ったら、メイクを教えるから来いと言われていて。お世話になってるし、行かないとちょっと…」

「え!?」

ルネが口元に手をやった。

「シディ統括長に、メイクを教えていただくんですの!?」

「?……はい」

いいなあぁ、と二人は声をあわせた。