「…あれ」

ふと、桜は気付いた。

(ニキビ、なくなってる……)

顔全体にバラっとあった、あの赤みを帯びた吹き出物が治っている。
代わりに、桜の本来の白くてキメの細かい肌がよみがえっていた。

「さすが、シディさんだな……」

自分の肌の美しさの価値は全く分からず、シディの予言どおりになった事に驚いていた。

(治ったら、また来んのよ。今度はメイクを教えるわ)

そう言われたことを思い出し、ブルッと身震いした。

「ぜ…絶対スパルタだ……」

どうしよう、黙っとこうかなと思ったが、万一バレた時、何を言われるか分からない。

「王様に馬車借りて、明日にでも行ってこようかな」

うん、と心を決めて、湯殿を出た。

「あっつい…」

ふう、と熱い息を吐いて、外に面した障子を開けた。

日に日に暑くなっていくようだ。

(……ここ、エアコンないよね)

はたと気づく。

夏を、どうやって乗りきろう。

汗びっしょりのデブスなんて、いくらなんでもあんまりだ。

王様やカナンといたら、かなり厳しい絵になることこの上ないし、シディにいくらメイクを教えてもらったところでドロドロだろう。