それからしばらく経ったある日の朝。

相変わらず朝風呂に入った桜は、体を拭いて髪を拭っていた。

ふと、鏡に映る自分の顔を見る。

相変わらずの奥二重で、丸い顔の低い鼻。

(…間違いなく宮中で一番ブスだよな……)

王もカナンも度々好意を示してくれるが、この顔と体を見たら、やっぱり全く理解できない。
こっちの世界の美形は、ちょっと趣味がおかしく育つんじゃないかと本気で思っている。

自分を好きだと言ってくれるその気持ちは嬉しかったが、どうふるまっていいか、まだ困ることがほとんどだ。

それに、早く二人のためにも自分の気持ちに結論を出したいのに、それすらわからないでいる。

(結局、私は誰の気持ちにも応えられないのかもしれない)

そう思うこともなくはなかった。

だけどだからといって、もとの世界に帰りますと宣言して、その方法を探し始めようとしたところで、王がすんなりと許すはずがない。

(……恋愛の悩みって、もっとこう……甘いもんかと思ってた)

自分の身の振り方にまで関わってくるなんて、桜が読んでいた少女漫画のどこにも描いてなかった。

「大体、恋愛無縁デブスには荷が重すぎるんだよ、あんなきれいな人たち…」

つい、逃げ腰の言葉が口をついて出て、いけない、と頭を振ってまた鏡を見た。