デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

きゅっと唇を引き結ぶ桜の手首を、ゆっくりと押さえつける。

心はもう、真っ黒に染まっていた。

「口で言ってわからぬなら、身体に教え込んでやろうか」

桜の黒い瞳が怯えに揺れだしたのを見て、またクスクスと冷笑した。

だが。

「………そんなことしたら、私一生あなたを軽蔑します」

震える声で小さく言うと、笑いを止めた。

「………っ」

苦しげに顔を歪め、乱暴に身を起こした。

ソファに腰掛け、桜から顔を背ける。

はぁ、と安堵の息をついて、桜も起き上がった。

チャリ、とネックレスを見る。

(……何でこんなに怒るんだろう)

まさか王のような自信と経験の豊富な大人が、ネックレスくらいでこんなに怒るとは思わなかった。

ワンピースの乱れを整えて、ソファに座り直す。

「王様……たしかに、その……カナンの気持ちは告白されました。でも、まだ本当に分からないのは同じです」

「………」

ぐっと、王は奥歯を噛みしめて、拳を握った。

「一体どうしたんですか。自信のある王様らしくないですよ。このネックレスだって、昨日王都に遊びに行けた記念です。それに、本当に私が好きだから、つけているだけです」