デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

あ、とルネが思い出したように言い出した。

「そうそう桜様、昨日は宮中はちょっと大変だったんですのよ」

「え?」

「我が君がいつになくお仕事を進められるものですから!しかも恐ろしいスピードだったらしいですわ」

フラウも真剣な顔でうなずいた。

「文官の方々がもう全然追いつけなくって、最後は無理を申し上げて休憩室でお休み頂いたらしいんですけれど、すぐに出ていらして、今度は各統括部の抜き打ち視察までなさって」

「はあー……」

「予算編成から施策から実績まで洗いざらいその場でお調べになって、曖昧な点や矛盾した所を一つ残らずご指摘なさったんですって。答えられなかった統括長にはご叱責があったらしいんですけれど……」

ブル、と震えて、ルネが付け足した。

「そのすべてをひとっっつも表情を変えずに淡々となさったらしくて、入って日が浅い者などは、恐ろしさに半泣きだったらしいですわ」

結局、昨日一日ずっと仕事をしていたらしい。

そして、かわいそうに臣下は夜遅くまで残務に追われたという。

さっきの表情とは一転して、二人はゾッとした顔で桜に言った。

「桜様……明らかに、桜様がいらっしゃらなかったからですわ」

「愛………ですわね………」

あのきれいな顔で、無表情に淡々と叱責されたら、それは恐ろしいだろう。

桜は思った。

今日は機嫌が悪くなければいいが……

自分の話の矛盾点をあの頭のいい人に延々突っ込まれると考えただけで胃に穴が空きそうだ。

「……王様の部屋に行くの、大丈夫かな…怖いなあ」

桜がそう呟くと、フラウとルネがズイ、と顔を寄せた。

「桜様、今日もし桜様が我が君とのお話を拒否などなさったら、明日には恐らく死人が出ますわ」

そんなバカなと笑おうとしたが、二人の目は真剣だった。