デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

客用の宮は、公宮から渡り廊下を使って行く以外ないため、二人は公宮の裏門に程近い所で降りた。

夜の公宮からの渡り廊下は静かで、月明かりが庭と二人の足元を青白く照らしていた。

廊下の床板がきしむ音がするばかりで、王都の賑やかさがまるで幻だったかのようだった。

「カナンは、お休みってどのくらいあるの?」

ふと気になって聞いてみる。

「月に4,5日といったところか」

「え、少なくない?」

少し驚いて言う桜に、肩をすくめてみせた。

「まあ、まだ若輩者だからな。独身だし、時間の自由もきくから。学ばなければならないことも多い」

「そっか……貴重なお休みだったのに、こんな時間まで大変だったね」

桜が言う。

「いや……別に、いつも休みの日は何をするでもないからな」

それどころか毎回、お前と一緒に過ごせたらいいというのは言えず、当たり障りのない答えをして横を向いた。

そうこうしているうちに、客用の宮が近づいてきた。

「……ねえ、カナン。良かったら、お茶一杯、飲んでいかない?」

何かお礼がしたくて、桜は恥ずかしそうに言った。

カナンは少し驚いて彼女を見たあと、嬉しさに目を細めた。ほんの少しだが、何だか近づけた気がして。

「……じゃあ、一杯だけ。戸口でな」

そう言って、うなずいた。