デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

王宮の門に入ると、桜はケープを脱いだ。

「ふう」

息をついて、簡単にたたむ。

馬車を呼ぶように門の兵に言って、到着するまでしばし待つ。

「……桜」

しばらく迷った挙句、カナンが声をかけた。

「ん?なに?」

振り向いた桜に、シャラ、と音がして、月明かりに静かに輝くネックレスが差出された。

「今日、あの露店で買ったものだが……いらないなら、処分してくれていい」

「あ」

そうだ、確か、ペアの……

ポッと顔を赤くする。ちらりとカナンをみると、やっぱり頬を染めていた。

シルバーのチェーンに、丸いペンダントトップが付いている。
よく見ると、乳白色の石が薄く貼り付けてあり、今夜空に浮かんでいる2つの月の片割れがモチーフのようだった。

この小さな月のほうが、女性用。
そして、石が貼っていない、少し大きめのシルバーの月のネックレスが、男性用。

「かわいい。……いいの?」

「私が持ってても仕方ないだろ。まあ……今日の記念というか」

女性にネックレスを贈った事など、もちろんない。
ぶっきらぼうな言い方になった。

「ありがとう!つけてみるね。…似合わないかもだけど」

受け取って、そっとつけてみる。少し留金に手間取ったが、何とかつけられた。

白い肌の上で、ネックレスは優しい光を受けて光っていた。

「どうかなあ。おかしくない?」

はにかんで笑う桜。カナンはぼそっと答える。

「……可愛い」

朝からずっと思っていたことが、ようやく言えた。