デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「カナン?」

「………」

「ねえ、怒らないでよ。遠い私の世界の話でしょ。こっちなら、結婚できるんでしょ?私も、カナンも」

そう桜が言うと、ようやくネコのような目をちらりと向けた。

「カナン、かわいい」

ふふ、と桜が笑うと、ますますむうっとして、「一つも嬉しくない」とぼやいた。

運ばれてきた料理は、いつも宮中で食べているような上品なものではなかったが、酒が進みそうな大衆的なもので、桜の口によく合った。

「美味しい。私、やっぱり庶民だなあ」

「まあ、どこかの姫君という感じはしないな」

酒のグラスを揺らしながら、カナンが軽く笑った。

「うん、本当にただの人間だったんだよ。こんなとこに来るなんて、思ってもみなかった」

しみじみ言う桜に、ふと真顔になった。

「だからね、もとの世界に帰る方法を探そうとしてて」

「!」

カナンの顔が強張った。

「でも、王様に止められて。今は中止してるんだけど……正直、方法だけでも探そうかな。すぐ帰るかどうかは分からないけど」

独り言のように話す桜に、厳しい眼差しを向ける。

「勝手な奴だな。我が君や、私の気持ちを知りながら待たせておいて、帰りたくなったらさっさと帰るのか。帰るつもりなら、最初から気持ちなど受け入れるな」

目を見開いてその強い言葉を受けたあと、恥ずかしそうに眉をひそめて、下を向いた。