デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

――濡れたような、漆黒に見えた。

小さく息を飲む。その背の高いフードの人物の眼差しがその刹那、桜の目線をとらえた。

ちらりと見えた、黒い瞳。

昏い闇のようなそれと、街の灯を映してきらきらと揺れる桜の瞳。

ほんの一瞬の出来事だったから、あっという間にお互いの姿は人混みにのまれた。

「大丈夫か?」

カナンが振り返る。

「あっ、うん………」

なぜか、ザワザワと胸が騒いでいた。

(今の人………私と同じ……?)

でも、全く確信はない。

「カ、カナン、今の、人……」

言いかけて、桜は止めた。
もう夜だし、もともと暗い髪色と瞳の人が、街の灯の具合でそう見えただけかも知れない。

それでもし、大騒ぎになってしまったら大変だ。

「ん?」

「あ……ううん、何でもないの」

わずかな動揺を隠して、笑って頭を振ってみせた。