デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「さてと。日ももう暮れるが、どうしようか…王宮に帰るか?」

少しずつ星が輝きだす空を見て、カナンは桜に聞いた。

「んー……」

もじもじと口ごもり、遠慮がちに口を開いた。

「せっかくだから、晩ごはんまで食べて帰りたいなぁ」

「我が君は、暗くなる前に帰ってこいとはおっしゃらなかったのか」

「あ、ううん、楽しんでおいでって言われただけ」

「そうか…」

なら、いいだろう。
カナンもほっとして、桜の手を引いて歩き始めた。

「王宮の方向に帰りながら、食事をとるか。行こう」

「うん」

昼間とほとんど変わらない人通りの多さに、改めて驚かされる。

王都の夜の顔を興味深く見つめていると、ドン、と道行く人に肩がぶつかった。

「わ!……あ、ごめんなさい。ちゃんと、見てなくて」

あわてて謝ると、桜と同じように深くフードをかぶった相手も、軽く会釈した。


その一瞬。

ぶつかった衝撃なのか、相手の長い髪がほんの一房、フードの外にこぼれた。