デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

そう恐れたカナンは、詳しくは説明しなかった。

「そうなんだ……ごめんね、結構長いこと寝ちゃってたみたいだね、私」

「……いや」

少し、目を細めて桜を見た。

元に戻ってよかったと思う気持ちがほとんどなのだが、その一方、あんなふうに懸命に自分をねだる彼女がもういないかと思うと、寂しいような、もったいないような。

何度も交わした唇の柔らかさや、肌の温もりを思い出して少し顔を赤くした。

「お前がもう大丈夫なら、出よう」

ケープを渡して、うなずく桜がそれをかぶるのを待った。


外に出ると、もう日が傾いている。

「うわ…もう夕方になりかけてる……あー……もったいない」

しゅん、と下を向く桜。

「また来ればいい。王都はまだまだ広いから」

安易に飲み物をすすめてしまった手前、申し訳なくなって優しくカナンは言った。

「うん…、でも、王様にまたお許しもらうのは、大変だなぁ」

苦笑いする桜の手を取って、歩き始める。

少しずつ街の灯りがともり始めて、閉店の準備を始める露店が多い一方、飲み屋や遊技場はいそいそと店を開け始めている。

「…夜は夜で、きれいな街だよね」

呟く桜。

「見たことがあるのか?」

「うん、初めてここについた時は夜だったから。アスナイさんと、シュリさんと一緒に」

「ああ、我が君に謁見した時か」

「そう。……二人とも、元気かな。お休みの前の日には王都に来るって言ってたけど」