デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

ふふ、と桜が嬉しそうに腕の中で吐息をもらして、そっとカナンの背に手を回した。
きっと本来の彼女の姿ではないとわかっていても、湧きおこる幸福感をどうしようもない。

それでも必死に残る理性で考えた。

(何なんだ?本当に…まるで催眠術にかかったか、おかしな薬でも飲んだような………)

そこまで考えて、はっと気づく。

(あの、果実水!)

あわてて袋の中から、桜が飲んだ空ビンを取り出して、ラベルの裏を見た。

“お二人の愛のお手伝い!
まるで果実水のような飲みやすさで、女性にも優しいお味です。

持続時間:約4時間”

「………」

惚れ薬…媚薬か。
気軽に購入しやすいようにしているのか、なんて紛らわしいラベルだ。

つう、と顔に冷や汗。

的当ての店主の、ウインクした顔を思いだす。

(つくづく、お節介な………)

がくう、と脱力した。
飲んだ時間から考えると、効果が切れるまであと3時間半ほどか。
その間をこの部屋でやり過ごすしかないだろう。

「カナン、離れちゃ嫌…」

少しすねたような声で、座り込んだカナンの背中から、桜が抱きついてくる。

柔らかくて温かな肌の感触が、シャツを通して伝わってきた。