デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

ビクリ、とその小さな手が震えた。

「………っ」

泣いている。

自分だって、楽しみだった。喜ぶ顔が見たくて、二人きりで一日中いられるのが嬉しくて、さっきまでは本当に楽しかったのに。

自分が優しい言い方が出来なくて、余裕がないせいで。
こいつが私の気持ちなんか少しも分かってないせいで。

「……のに」

ぽつりと、桜の声がこぼれた。

「……?」

思わず足を止めて、その顔を振り返る。

くし、と鼻をすする音がして、うなだれたフードの頭の下を、空いている方の白い手がぬぐった。



「すごく、恥ずかしい事、いっぱい、頑張ったのに……」


小さな声のその言葉に、揺れる緑の瞳が見開かれて頭が真っ白になる。

そして次の瞬間、カッと全身が燃えた。

激しい感情のまま、力任せに桜の二の腕をつかみ、今来ていた大通りを外れる。
店舗と店舗の壁の間にひっそりと走る、ごく狭い通路に彼女を引きずり込んだ。