「シュリ。いつまで寝てんだ、起きろ」

呆れたような冷たい声で、アスナイは相棒の頭をブーツの先で小突いた。

柔らかい光がさしこむ、広葉樹の巨木がいくつもそびえる森の中、美しい緑の絨毯に寝転がっていた赤い頭がわずかに動いた。

「…あと5分」

「ダメだ。夜になる」

アスナイの返事はにべもない。

ゆるゆると、シュリと呼ばれ、足蹴にされた赤毛の青年は目を開けた。
その濃いブラウンの瞳が、仏頂面のアスナイの紺色のそれをうんざりした様子でとらえる。

「…アスナイ、俺疲れてんだけど。ずーっと、夜通しリーを走らせてさあ」

「そうなったのもお前が計画的な旅程を守らないからだろ。自業自得だ」

「冷ってえよなあ…同期武官なのに」

「間に合わなかったら、お前も俺も文字通り首が飛ぶぞ。そうならないように今忠告してやってるんだ」