デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

大通りは、人と活気であふれていた。

様々な店が立ち並び、匂いも色彩も豊かだった。

「賑やかだね。すごいなあ」

桜が黒い瞳をきらきらさせて言う。

「フードが取れないように注意して見ろよ」

「うん…」

すっかり未知の賑わいに魅了されたらしい顔に、カナンは小さく苦笑いした。

そして、桜はカナンを質問攻めにする。

「カナン、あの大きな魚、何?近くに海があるの?」
「あそこで踊ってる人たち何?芸人さん?」
「肌の黒い人たちもいるんだね。遠くから来たのかな」

きゅう、と知らず知らずのうちにつなぐ手に力がこもって、笑顔で緑の瞳を見上げた。

まるで子供のような無邪気さ。

こんなに心から楽しそうな表情の彼女を、カナンは初めて見た。宮中では見たことのない顔だ。

誰も、王も知らない顔。自分だけが、知っている顔。

…連れてきて良かった。

心からそう思った。自然と自分も口元がほころんで、できるだけ丁寧に答える。

しばらくそうやって、大通りに沿って二人でゆっくりと歩いた。

すると、徐々に大門からの人通りが増えてきはじめた。
大きな荷物を載せた荷車が何台も続き、牛を何頭も連れた隊商が大声で周囲に注意を呼びかけている。
土煙を上げて、そんな列が何個も続いた。

「桜、危ないからこっちへ来い」

カナンが後ろからそっと桜の前に手を回し、引き寄せた。