デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

二人とも少し顔を赤くして、押し黙ったまま橋を渡った。

「……言っとくが、さっきのアレを否定しなかったのは、そのほうが面倒がないからだからな」

じろ、とネコのような目で桜を睨む。

“アレ”とはもちろん、さっきの衛兵の夫婦発言だ。

「う、うん……」

フードの下の頬を赤くしたまま、桜がうなずいた。

「ちゃんと、我が君の通行証だってもらってあったんだからな!それを出す前に、あの衛兵がバカな事を」

「わ、分かってるよ…ごめん、私なんかとそういうふうに見られちゃって」

身を縮めて、小さく謝る姿に、う、と言葉に詰まった。

すぐに、『しまった、言い過ぎた』と後悔するが、遅い。

賑やかな通りにさしかかったが、桜はさっきまでの楽しみに満ちた表情から一転、しょんぼりとフードの頭を下にむけていた。

やっと、好きな娘とこうして自由な時間が持てたのに、楽しませるどころか、こんな顔をさせてしまっている。

もし、自分の主君だったら。あの二人の武官だったら。

そんなものは笑って軽く受け止めて、逆に桜への愛情表現に変えてしまうくらいしただろう。

自分の余裕のなさが情けなかった。