デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「な……」

黒の瞳が、珍しそうにまじまじと自分を見つめている。

きちんとメイクをされ、編み込まれた黒髪はミントグリーンの清楚なワンピースとよく似合っていた。

「お…おま………」

――――お前も、すごく可愛い。

(言えるか、そんな恥ずかしい事!)

赤い顔のまま、ふん、と横を向いた。

「バカなこと言ってないで、さっさと行くぞ。もう馬車を呼んである」

「あ、うん」

ハッとして、急いでケープを羽織る桜。

戸を閉めながら、カナンは自分にうんざりした。

(何で、こんな感じの悪い事しか言えないんだ)

せっかく、今日は彼女を独占できるのに。

てくてくと先に立って渡り廊下を歩く桜の後姿を見つめながら、そっとため息をついた。