デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

怒涛のように二人が去ったあと、やれやれと桜はソファに体をもたせかけた。

シディといいあの二人といい、メイクをしているときのあの目のギラつきはなんだろう。

(恐らく一生わからないかな……)

ふへ、と乾いた笑いがもれる。

まだ始まってもいないのに、疲れちゃった。

しかも、何だかこんなに気合をいれた感じになってしまって、却ってイタいやつと思われないだろうか。

桜にとっては、すっぴんよりそっちのほうがよほど恥ずかしかった。

忘れないようにケープを取ったところで、戸が叩かれた。

「はい」

返事をすると、カナンが戸を引いた。

「準備出来たか。行くぞ」

その姿に、桜は目を丸くする。

いつもの長い文官用の着物ではなく、シャツにパンツスタイルで、腰には念のためだろうか、剣をさしている。
いつもおろされている金の前髪は、数筋残してざっくりと後ろに流れて、額があらわになっていた。

「カナン……いつもと格好が違うね」

驚いたまま桜が言うと、ん?と自身を見下ろした。

「外出するのに、ゾロッとした着物じゃ、動きにくい」

「髪型も違うー」

「あんな前髪、いざ剣を振るうときに邪魔だ」

いつもの物静かないでたちとは違って、武官のように凛々しい。

「へー。かっこいいねえ」

桜にとっては『これウチのワンちゃんなの』『へーかわいいねえ』、くらいの軽い賛辞だったのだが、あまりの素直さにカナンは途端に赤面した。