「…………」
カナンと別れて約二時間後、ほこほこと湯上がりの蒸気を立ち上らせながら、桜はフラウのくれたピンク色の瓶、小さなケースとにらめっこしていた。
つけるべきか、つけざるべきか。
つけたら、フラウが言ったような展開になることを期待してるみたいで、人知れず赤面する。
でもつけなかったら、せっかくの女官二人の好意を無駄にする気がする。
結局、桜は瓶のフタを開けてみた。
つけたからといって、本当にそんな事になるわけない。
(第一、カナンは私の事、友達にしか思ってないだろうしね)
うん、と一つうなずいて、オイルを手のひらに取り、脚にのばしてみる。
「わ……いい匂い」
少し甘くて、優しい香りがふわりと広がった。
桜はまるきり気づいていないが、その姿はデート前日に自分をみがく女の子そのものだった。
明日、どこに行こうかな。
どんなものがあるんだろう。
そこまで思ったときに、はたと気づく。
(あ、私……お金持ってない)
しまった……とうなだれた。
王様に頼んで、バイトでもさせてもらえばよかったかな。
(……まあいいや、色々見るだけでも楽しいよね)
そう思い直し、またオイルを手に取った。
