デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

就寝の時間になった。

王が寝台に入り、少しだけぎこちなく桜をいざなう。

「……桜」

伸ばされたその手に、彼女は真っ赤になりながら震える手で応じた。

キシ、と広い寝台が少し音を立てる。相手に不快感を与えないぎりぎりの距離を取って、ぺたんと座った。

(絶対、寝れないよ!こんなの!)

だから自分はソファで寝ると言ったのに。

『そなたがソファで寝るというのに、男である私がのうのうと寝台を使えるわけないだろう』

しかしこっちからすると、王様の寝台を奪った上に、その主をソファで寝させるなんてこともできなかった。

お願いだから気にしないでください、あのソファだって十分な大きさですと言っても、頑として承知しなかったのだ。

(何で、こんな事に………)

目の前にこんなにきれいな男の人がいて、お互い素肌に夜着一枚だけで、同じ寝台で寝ようとしている。

意識しない人間なんか、いるわけない。

唇を結んでうつむく桜。
そんな彼女を、じっと紫の瞳が見つめた。

ふと、首筋から胸元までに刻まれた赤い痕に目がとまった。そして、その下にはふっくらとした影が、夜着の合わせからのぞいている。

抱きしめてしまいたい衝動をグッと抑え、横になる。

その様子を見て、少しホッとしたように桜も遠慮がちに横になった。

ふう、と息をついて、桜に腕を伸ばす。

「桜。手を」

言われて、おずおずとその手を握った。

王が優しく笑い、そっと握り返した。

「今日は、楽しかった。……おやすみ」