その頃、公宮で仕事を終えたカナン。
いつもはもっとずっと早く終わるのだが、今日はなかなかはかどらずに、同僚の中でも一番最後に部屋を出た。
ものすごく疲れた。集中できないままの長時間の仕事が、こんなに疲れるものだとは。
ゲッソリして、てくてくと公宮の廊下を歩く。まだ人は残ってはいたが、その数はまばらだ。
―――今、我が君と桜は何をしているのだろう。
もう何回浮かんだか分からない疑問がまた頭をよぎり、そんな自分にうんざりして、ハア……と深いため息をついた。
陽が落ち、夜がだんだんと深まるにつれて、その疑問は焦りを伴ってカナンの仕事の手を何度か止めさせた。
桜は話をするだけと言っていたが。
“朝まで私の傍にいてもらう”
あの時の、お前の心などお見通しだと言わんばかりの主君の顔に、胸が苦しくなった。
(我が君は、桜の事を特別に思っておられるのだ。…信じがたいが……そうなのだろう)
身を引くべきだ。桜と心からの友人というだけで十分ではないか、と忠臣であろうとする自分の心が言う。
だが一方で、なぜ引く必要がある?人の心は王だろうが神児だろうが、どうにもならない。桜を好きでいる事に、なぜ負い目を感じなければならないのか、という本音が鎌首をもたげるのだ。
公宮の裏口に出て、遠くに見える深宮を見る。
警備をする近衛のかがり火が、小さくそれを囲んでいた。
……考えても、仕方のないことだ。
目を閉じ、きゅっと唇を結んで、自分の部屋がある公舎への帰路につく。
明後日の自分との外出を、目を輝かせて喜んだ彼女の顔。
今夜がどんな夜になろうと、自分にはそれが一番大事なのだ。
そう思い、カナンは背筋を伸ばして、大股で歩き始めた。
いつもはもっとずっと早く終わるのだが、今日はなかなかはかどらずに、同僚の中でも一番最後に部屋を出た。
ものすごく疲れた。集中できないままの長時間の仕事が、こんなに疲れるものだとは。
ゲッソリして、てくてくと公宮の廊下を歩く。まだ人は残ってはいたが、その数はまばらだ。
―――今、我が君と桜は何をしているのだろう。
もう何回浮かんだか分からない疑問がまた頭をよぎり、そんな自分にうんざりして、ハア……と深いため息をついた。
陽が落ち、夜がだんだんと深まるにつれて、その疑問は焦りを伴ってカナンの仕事の手を何度か止めさせた。
桜は話をするだけと言っていたが。
“朝まで私の傍にいてもらう”
あの時の、お前の心などお見通しだと言わんばかりの主君の顔に、胸が苦しくなった。
(我が君は、桜の事を特別に思っておられるのだ。…信じがたいが……そうなのだろう)
身を引くべきだ。桜と心からの友人というだけで十分ではないか、と忠臣であろうとする自分の心が言う。
だが一方で、なぜ引く必要がある?人の心は王だろうが神児だろうが、どうにもならない。桜を好きでいる事に、なぜ負い目を感じなければならないのか、という本音が鎌首をもたげるのだ。
公宮の裏口に出て、遠くに見える深宮を見る。
警備をする近衛のかがり火が、小さくそれを囲んでいた。
……考えても、仕方のないことだ。
目を閉じ、きゅっと唇を結んで、自分の部屋がある公舎への帰路につく。
明後日の自分との外出を、目を輝かせて喜んだ彼女の顔。
今夜がどんな夜になろうと、自分にはそれが一番大事なのだ。
そう思い、カナンは背筋を伸ばして、大股で歩き始めた。
