デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「あの…王様」

そっと声をかけると、わずかに頭が動いた。

「…ごめんなさい」

すると、驚いたような顔で桜を仰ぎ見た。

濡れ髪に夜着姿の彼女をまともに見てしまい、またかあっと赤くなる。

「明日、王宮の外に出されますか?私…。それなら、今のうちに準備をしたいんですけど」

思いがけない言葉に面食らった。

「な…何を、言っている?」

「え、だから、さっき……お風呂で、私が王様におかしな事しちゃったから、怒ってるんですよね?」

「ち、違う!」

何でそんなあさってな思い込みをするのだろう、この娘は。

あわてて王は桜の手を握った。逃すまいとするように。

彼女からの、小さな一瞬のキス。

驚きすぎて、混乱したままこの部屋に帰ってきたが、桜の顔を見ると急に現実としての実感がわいてしまい、どうしていいか分からなかったのだ。

「怒っていない。王宮から放り出したりなど、する訳がないではないか。むしろ…」

ものすごく、嬉しい。

困ったような桜の顔を見ていると、幸福感が胸いっぱいにあふれてきた。

頬を染めたまま、花のように笑う。

「……おそらく、そなたが想像するよりもずっと、嬉しい」