デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

薄暗い中に灯りがともる幻想的な石造りの浴場は広く、浴槽も大きい。お風呂というより、温泉だ。

上を見れば立派な屋根があり、その向こうに星空が広がっていた。

桜への配慮なのか、王はそちらを向いて湯に浸かっている。

少し離れた所で、そろそろと湯に身を沈めた。

肩まで入った所で、初めて王がこちらを向いて片手を伸ばす。

「……桜」

おいで、と言うように。

きゅっと恥ずかしさに唇を結び、しっかりと片手で胸元を押さえてその手を取った。

そのままスイ、と湯の中を泳がされて、横抱きのような体勢で王の膝の上に収まった。

「お、重いですよ」

焦って降りようとする桜に、クスリと笑う。

「湯の中だ、重くなどない」

そっと手を組んで、腕の中に彼女を閉じ込めた。

桜はチラリとその表情を見る。

二つの月の光に照らされて、ため息が出るほどきれいだ。

(はあ……ずるいよなあ……もうここまで美人だと、毒気が抜かれるよ)

しばらくそのまま、二人とも黙って空を見ていた。



「桜、さっきは脅してすまなかった」

ぽつりと、王が小さく謝った。

「え…」