デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

学校の音楽の授業でこれを習ったとき、その言葉の響きが好きになって、帰り道によく口ずさんでいた。

「はあ………じゃあ……歌いますね…短いですからね?」

緊張で、きゅっと胸で両手を握る。

小さく、歌い始めた。

曲は、『朧月夜』。

日本語独特の何とも言えない柔らかさ、韻の踏み方。

そして、情景描写の細やかさ。

決して長い歌ではないが、聴くものの心を優しくとらえる。

少し緊張した桜の高い声と相まって、イノセントな響きだ。

「…………」

「お……終わり、です……」

目を伏せて、じっと聴いていた王は、ふう…とため息をついた。

(やっぱり下手だった?もう…だから嫌だったのに)

恥ずかしくて下を向く。

「…美しい言葉だ」

驚いて顔を上げると、彼は少し頬を染めて、柔らかく目を細めている。

「きっとそなたの国は、美しい国なのだな」

そっと桜の手を取る。

「また、歌って欲しいものだな。…私に」

想像以上に優美な彼女の歌声に、王は心からそう言った。