デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

しばらくして、どうにか平静を取り戻した王と桜は、またとりとめのない話を始めた。

国のことや音楽のこと、そして桜の世界の、外国のこと。

「この世界の音楽って、聞いたことないから、一度でいいから聞いてみたいです」

楽器はどんなものだろう。歌は。

「祭りや、宮中行事の際は編成の大きな曲が流れる。今度聞いてみるがいい」

桜はうなずいて、ふと気になって聞いた。

「王様は、何か楽器、されるんですか?」

「一応な」

「え、聴きたいです!何をされるんですか」

「横笛だ。まあ平凡な腕だから、聴いても大して感銘はうけないぞ。王としての教養の一つで渋々習っただけだからな」

横笛。このきれいな顔で、長いまつげを伏せて吹くさまは、きっと絵になるだろう。

「王様、聴きたいです。一曲聴かせてください」

王に一曲笛を吹けなんて言ったら、他の人間なら投獄ものなのだが、桜には困ったような微笑みが向けられた。

「もう何十年も吹いてない」

「ダメですか…」

しゅんとして下を向く。その姿に、思わず苦笑いした。
王は少し考えて、

「では、そなたも一曲私に聴かせてほしい。曲でも、歌でも」

「え……」

固まる桜。
楽器なんかやったことない。となると必然的に歌だが。

「恥ずかしいです……全然上手くないし」