「ぅわかりました……頑、張り、ます……」

小さく返事をした桜に、少し目元を染めて、ふわりと微笑んだ。

ここまで必死になる動機がカナンとの外出というのは気に食わないが、少なくとも明日の朝までは桜はずっと自分の傍にいるのだ。
それが、たまらなく嬉しかった。

「あ、王様、カナンを帰してあげていいですか」

「ああ、そうだな」

二人は立ち上がり、深宮の入口へ。その姿に気づいた金髪の少年が立ち上がり、一礼した。

「カナン。ご苦労だったが、今日はお前だけで戻れ」

「は……?」

キョトンとする彼に、桜が言った。

「あのね、カナン。明後日の分まで、王様とここでお話することになったから。そしたら、一緒に街に行っていいって」

そう言うと、後ろから王が静かに言う。

「そういう事だ。桜にはここに泊まって、明日の朝まで私の傍にいてもらう」

「!」

カナンの緑色の瞳が凍りついた。

「誤解を生むような言い方、やめてください王様…。カナンまでからかわないでください」

「本当のことであろうが」

つい、と横を向く王。

「カナン、ほんとにただお話しするだけなんだからね。だから、明後日街に連れてって。私本当に楽しみなんだ。お願い」

真っ直ぐ自分を見つめる瞳があまりに真摯だったから、カナンは信じるしかなかった。

「分かった。くれぐれも失礼のないようにな」

うなずいて、王に「失礼いたします」と一礼して歩いていった。