「で、で、でも、ううう薄紅女官の代わりって…………」
“王の、夜のお相手をするんですわ”
フラウの言葉が頭に蘇り、みるみるうちに耳たぶが熱くなる。
そんな桜を見て、くすくすと笑いだした。
「何を想像しているのか知らぬが、私と共に食事を取って、存分に話し相手になってほしいだけなのだが?」
「!」
(もう!からかわれた!)
こんなきれいな人とセンスのいい冗談を交わせるほど、デブスは経験値ないのだ。
「じゃあ最初からそう言ってください!」
赤い顔のまま、声をたてて笑いだした相手に抗議する。
「ああ、だが桜」
「なんですかっ」
「今日はここに泊まってもらうがな」
「!?」
呆気にとられる桜に、こともなげに言う。
「そなたと、ずっといたい。もっと話したい。夜までの時間だけでは足りない」
笑いをおさめ、そっと体をよせて、桜の頬に手を添えた。
「そなたの嫌がることはしないと約束しよう。今晩だけだ。私の傍にいてほしい」
至近距離でじっと目を見つめられ、ますます赤面してうつむいた。
ものすごく心臓に悪い。
(こ…こういう状況が、今日寝るまで……)
自分にはハードルが高すぎる。高血圧で倒れるかもしれない。
(うう……でも、街に外出……これを逃したら、もう………)