「……明日では駄目だ。今日が良い」

「え」

動きを止め、困ったような表情。

「今日って……もうこんな時間ですよ。夜になっちゃいます」

「良いではないか」

にーっこりと王は微笑んだ。

「食事も、ここでとれば良い。…ああそうだ、今日はそなたに薄紅女官の代わりをしてもらおう。それがカナンの同行を許す条件だ」

「は!?」

「今日いきなり暇を出したからな。まだ夜間の体制が決まっておらぬのだ。明日にはもう通常の女官が交代で勤務するだろうが、今日は誰もいない」

「今日も普通の女官さんにお願いすればいいんじゃないんでしょうか」

「彼女らは朝から働いている。夜間まで働かせたら超過労働だろう?」

「あの……じゃあせめて、体制が整うまで薄紅女官さんを辞めさせなければよかったんじゃ………」

「今更言っても詮ない事。私が必要ないと思った。だから暇を出した。それだけだ。即断即決は国を治める基本なのだぞ、桜」

澄ました顔で言われ、あう…と何も言えなくなる。