男が桜を連れて入っていったのは、大きなテントだった。
外は明るいのに入口からうす暗く、テントは安っぽい装飾がほどこされているが、薄汚れている。
ばさ、と無造作に男が入口のカーテンを払って中に入ると、ランプの灯りのもと、三人の人物がこちらを振り返った。
一人は中年の痩せぎすの女。二人は双子だろうか、そっくりなスキンヘッドの若い男で、それぞれ刀を腰に下げていた。
桜を連れてきた男が、彼女を3人の前に突き出して何事か言った。
すると、彼らはニヤニヤと嫌な笑いを浮かべ、お互いに顔を見合わせると桜の元へやってきて取り囲む。
交互に桜の顔をのぞきこんでは、頭からつま先までジロジロと眺めまわしながら侮蔑の眼差しでケタケタ笑った。
醜い。
なんて醜い女。
言葉は分からずとも、この目線や笑い方は、子供のころから自分に向けられてきたものと全く同じ。
ああ、人間の美的感覚は私の元の世界と同じなんだな…と、うつろな心で桜は思った。
