深宮に着いて、入り口でカナンと別れた。
女官の後について、いつもの部屋へ向かう。
相変わらず静かな宮だ。
昨日までと全然変わらないように見える。行き交う白いワンピースの女官もそのままだ。
朝は悲嘆にくれる薄紅女官たちで阿鼻叫喚だったと聞いたが、まるで嘘のような日常があった。
「我が君、桜様です」
戸を叩き、いつもと同じ口上を述べたあと、部屋の中へと桜を促して帰っていく。
帳をくぐると、微笑みを浮かべた王が、桜に歩み寄った。
「桜。呼ぶのが遅くなって、すまなかったな」
「あ、いえ」
やっぱり朝の事があって緊張してしまう。
何でこの人はこんなに普通なんだろう。
何だかどぎまぎして立っていると、桜の間近に来た王が、じっと彼女を見つめた。
「……シディ統括長の腕は確かに一流だな」
いつもとはガラリと違う雰囲気の桜に、目を細める。
「が……こんなにこの肌を他の男の目にさらすのは、心底惜しい」
長い指が、その白い首筋から肩、鎖骨をなぞって、デコルテでスルリと円を描いた。
「!」
くすぐったさにビクリと桜は身をよじり、瞳を伏せて頬を染めた。
(もう!こういう冗談は慣れてないのに!)
軽い抗議で、キュッと紫の瞳を睨み上げた。
