デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

カナンはわざと、鼻で笑ってみせた。

「我が君が、お前一人に言われたことだけで動かされるわけないだろう。悠久の時の中、この国を統べてきた方だぞ。単に飽きられたに決まっている」

桜にも、自分にも言い聞かせるように、カナンは話した。

「そう…よね」

考えすぎだ、きっと。カナンの言うように、飽きただけかも。美人は三日で飽きるって言うし。いやそれはそれでサイテーだけど、王様ならそんなもんなのかも……

桜の世界でも、『後宮』だったり『大奥』といったものは歴史上あったから、権力者が女性を囲って、飽きたら暇を出すという感覚はまだ分からないでもない。

でも、原因が自分だったらと思うと、冷や汗が出る思いだった。

カナンはカナンで、王の心が単に珍しい客人としての気まぐれではなく、本当に桜自身に向き始めているのではと思い、焦っていた。
もし、王が桜を深宮の奥深くに閉じ込めて寵愛し始めたら、もう彼女の声どころか、姿を見ることすら難しいだろう。今はまだ、桜の意思を尊重しているようだが、これからは分かったものではない。

あの二人の武官もまた王都にやって来て、桜と会うだろう。
心から信頼する二人の気持ちを知った時、桜はどう思うだろうか。

……対して自分は。

毎日顔を合わせるとは言え、客用の宮から深宮までの、この渡り廊下の一往復分だけの時間しかない。

美しい王と、二人の優秀な若き王都武官。

あまりに強力な相手にげんなりしたが、ただ指をくわえて桜が誰かのものになるのを我慢して見ていられる段階は、自分の中でとっくに過ぎていた。