デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

トントン。

桜の部屋の戸が叩かれた。

「はい」

「失礼致します」

返事をすると、もうこの部屋の担当になっているのだろうか、またあの若い娘二人組が膳を持って入ってきた。

「あ」

桜があわてて立ち上がる。そして二人に頭を下げた。

「あの、朝はすみませんでした、ご迷惑かけて……怒られませんでしたか」

彼女の謝罪に、女官二人はぎょっと目を見開いて、あわてて膳を置く。

「お、おやめください!私たちに頭を下げられるなんて!」

「そうです、お叱りはありませんでした!ですからお顔を上げられてください!」

血相を変えて手を振った。

よかった、叱られてなかったのか。

ホッとして、桜がようやく顔をあげて笑うと、二人も安堵したような表情になった。

思わずふふっ、と顔を見合わせて笑う。二人の女官に、桜に対する嫌悪感や恐怖はもう感じられない。

「あのう、よかったらお二人の名前、教えていただけませんか」

桜がおずおず聞くと、女官に名前を聞く人間が珍しいのだろう、二人ははにかみながら自己紹介した。

「フラウと申します」
これは、茶色の髪の娘。
「ルネと申します」
この間結婚したという、青い髪の娘。

よろしくお願いいたします、と二人揃って頭を下げた。