デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

相変わらず、大きなアトリエは活気にあふれている。

「はあ……忙しそう……」

「そぉよ、今は丁度『寒冷期』の服を作る作業のピークなの。なかなか王の御衣のデザインが決まらないのよン。あれだけ美しい御方ですもの、も〜迷っちゃって迷っちゃって迷っちゃって」

フリフリとヒップを蜂のように振りながら、女性の服のサンプル室に入った。

戸を閉めると、シディが桜に向き直る。

「さてと、子豚、着替えが欲しいそうね。二枚じゃ足りなかったの?」

「……」

ごくん、と喉を鳴らし、桜はおずおずとケープを取った。

「ごめんなさい、シディさん……こんなに、可愛いワンピース、貸してくださったのに」

うつむいて、胸元を見せる。

胸の下まで無残に破かれた作品に、シディは一瞬息を呑んだ。

唇を噛んで、叱責の言葉を待つ桜。

「…………」

しばらく沈黙が降りたあと、シディが口を開いた。

「…よく見せてみなさい」

言われるがまま、桜は胸元の手を外した。

不注意で破れたものではない。襟ぐりにつかまれたようなシワがあることから、桜が着た状態で、誰かが破ったのだ。
そして柔らかな生地を重ねて作ってあるが、女性の力でおいそれと破けるほど、やわには作ってはいない。

ふと、シディの目が桜の首から胸元にかけて散らばる、赤い痕に止まった。

「アナタ、それ…」

シディの視線の先に気づき、あわててそれを隠して、羞恥に赤くなって下を向いた。