デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「もう…憎まれてでも、そなたを帰したくなかったから……身体で私に繋ぎ止めることしか、私には分からなかった」

驚きと突然の王の告白に、思わず上半身を起こして、呆然とその苦しげな顔を見つめた。

「どうすれば、信じてくれるのだ?桜」

トン、と糸が切れたように、額をむき出しになった桜の肩に乗せる。

シャラ、と耳飾りが揺れ、髪の香りがほのかに流れた。

「そなたが好きだ。どこへも、行ってほしくない…。誰にも、渡したくない」

「……お、王様………」

「すぐに、私の気持ちに応えてほしいとは言わない…だが、信じてほしい」

本当にこの人が何百年も生き、この世を統べる人なのだろうかと思うほど苦しげな姿に、桜は目をしばたかせた。

(王様が言うように…確かに私は、王様の言うことに耳を貸さなかった)

きっと、追い詰めたに違いない。だから、聡明なこの人が、こんな事をしたのだ。

涙は止まり、平静を取り戻した桜は、小さく心を決めた。

「……分かりました。信じます」

やっと望んだその言葉に、王は目を一瞬見開いて、ゆるゆると表情を和らげた。

桜は、自分の肩に顔を伏せたままの頭を、恐る恐る両手で抱える。そのまま、ゆっくりと藍色の髪をすくように撫でた。

気が遠くなるような心地よさに、うっすらと微笑んで目を閉じる。

「……眠ってしまいそうだ」

「お仕事は?」

「残ってる。………今頃皆、泡を食ってるはずだ」