デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

身をかわすヒマもなく、中年男の太い腕が桜のスウェットワンピの首根っこをつかんだ。

「きゃ…!!」

グイ、と無理やり立たされる。もがいてもびくともしない力で。

桜を追いかけてきた男たちに、何事か言う。

すると、彼らは顔を見合わせて二、三言言葉を交わすと、うなずきあった。そしてぞろぞろと引き上げていく。

この中年男は、桜の身をひきわたしてくれとでも言ったのだろう。そう彼女は考えた。

一応、この場は殺されないで済んだが…

どう考えても、この男も善人ではないばかりか……

こわい。

どうしよう…これから私、どんな目にあうんだろう。

涙がその目にたまる間も許さないかのように、男が桜を引きずるように歩きはじめた。