デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

ふと、女官の目線がこちらをむいた。

「きゃっ!」

青くなって、慌てて二人はひれ伏す。

驚いたようにそれを見た桜が、振り返った。

「あ………」

王を見て、目を丸くする。

「何をしている?」

人を従え、着飾った王が、静かに桜を見据えて聞いた。
近衛が、鋭い目線を桜に向けている。

圧倒されそうになるのを何とか踏みとどまって、口を開いた。

「……馬車に乗れるところを、教えてもらおうと思っただけです」

「馬車?」

「はい」

「何故に」

心の波を抑えながら、王は聞いた。

「…王宮神処に、行ってみようと思いまして」

「!!」

その意図を瞬時に理解し、彼は頬を強張らせた。

胸がギリギリと絞まるように痛む。

「……残念だったな。馬車は、私の臣下のためのものだ。そなたには使えない」

桜がためらいなく、自分からさらに遠い場所に行こうとしているのが腹立たしくて、悲しくて、冷たく言い放った。

私は、もう後戻りができないというのに。そなたを追うことも、できないのに―――