デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

そしてそれを隠しだてしたことで、桜の自分への不信感が確信になってしまったのだ。

(……どうすればよかったのだろう)

考えても、答えは出ない。

(いや、これからどうすればいいのだろう)

王であっても体が不調なら他と平等に辛いだろうと、ここまでやって来るような娘。

もし昨日それを知っていたら、どんなに嬉しかっただろう。

話す相手は、自分ではなくても薄紅女官がいるじゃないですかと、静かな口調で言っていた。

(そなたと、薄紅女官が同じだと?)

ふっ、と冷笑が浮かんだ。

馬鹿な事を。人を出し抜き、身体だけで私の寵に徹底的にすがる女と、そなたが同じ?

ざば、と音を立てて浴槽から出る。

(――あの娘が、この世界に来なかったら。出会っていなかったら)

おそらく自分は今日も庭師のように、淡々と国民の繁栄のために努めていただろう。

静かに。こんな心を乱され、自己嫌悪に陥ることなく。

いっそ、出会わなければよかったのだろうか。はじめから王宮の外に出していれば。シュリやアスナイに、渡していれば。

“一度その美しさを知ってしまったら、やっぱりその姿を求めずにはいられないものですよ”―――

ため息が、そっと漏れる。

そうだ。もう遅い。

初めて彼女と話した時から、惹かれていたのだから。