王は夕餉の箸を置いた。
用意された量の半分ほどだ。
死ぬことのない自分は、食事をとらなくても餓死することはない。空腹感が不愉快なだけで、それがおさまればもういいのだ。
食事を作った臣下への敬意として、いつもきれいに食べる。
ただ、今日は無理だった。
深宮の奥、一人にはあまりにも広く、贅沢な作りの私室で、短い食事を終えて立ち上がった。
その時、トントンと小さく戸が叩かれ、薄桃色の衣をつけた女が二人、手をついて礼をした。
「我が君……お食事はもう、お済みですの?」
どちらも潤んだ瞳の、魅惑的な肉体を持つ女だ。
「ああ」
短く答えて、髪を一つに結わっていた髪紐を解いた。
二人の女官に一瞥もくれず、湯殿へ向かう。
スルスルと音もなく、二人がついて来た。
湯殿の前に着いた時、王は初めて二人を振り返って言う。
「今日は、介添は要らぬ。下がってよい」
なみいる同僚に抜け駆け、内心意気揚々とついて来た薄紅女官は、思わず「え……」と声を漏らした。
湯浴みの時と就寝前は、寵愛を得るチャンスなのに。
「なれど、我が君……お食事もあまりお箸がお進みでなかったご様子………少しでも、お慰めしてさしあげたく……」
あきらめきれず、猫のように柔らかくてしなやかな体を左右から押し当てて、二人の女官は王を悩ましげに見上げた。
「聞こえなかったか?下がれと言った」
なんの感情もない声で、二人をゆっくりと振りほどいて湯殿の扉を閉めた。
用意された量の半分ほどだ。
死ぬことのない自分は、食事をとらなくても餓死することはない。空腹感が不愉快なだけで、それがおさまればもういいのだ。
食事を作った臣下への敬意として、いつもきれいに食べる。
ただ、今日は無理だった。
深宮の奥、一人にはあまりにも広く、贅沢な作りの私室で、短い食事を終えて立ち上がった。
その時、トントンと小さく戸が叩かれ、薄桃色の衣をつけた女が二人、手をついて礼をした。
「我が君……お食事はもう、お済みですの?」
どちらも潤んだ瞳の、魅惑的な肉体を持つ女だ。
「ああ」
短く答えて、髪を一つに結わっていた髪紐を解いた。
二人の女官に一瞥もくれず、湯殿へ向かう。
スルスルと音もなく、二人がついて来た。
湯殿の前に着いた時、王は初めて二人を振り返って言う。
「今日は、介添は要らぬ。下がってよい」
なみいる同僚に抜け駆け、内心意気揚々とついて来た薄紅女官は、思わず「え……」と声を漏らした。
湯浴みの時と就寝前は、寵愛を得るチャンスなのに。
「なれど、我が君……お食事もあまりお箸がお進みでなかったご様子………少しでも、お慰めしてさしあげたく……」
あきらめきれず、猫のように柔らかくてしなやかな体を左右から押し当てて、二人の女官は王を悩ましげに見上げた。
「聞こえなかったか?下がれと言った」
なんの感情もない声で、二人をゆっくりと振りほどいて湯殿の扉を閉めた。
