デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~


見ると、男たちは明らかに困惑した表情を浮かべていた。

皆一様に、桜の右側の男たちの後ろに視線を投げている。

やがてずい、と彼らを押しのけて、一人の中年男が桜の前に姿を現した。

でっぷりと太り、腹が出ている。深い沼のような濁った緑色の体毛が手足に生え、その顔にも同じ色のヒゲが口元を囲っていた。

男は桜を見ると、

ニイィ

下卑た笑いを浮かべた。

「……」

自然と冷や汗が背中を伝う。

言葉なんか分からなくとも、関わらないほうがいい人間だと本能が警告している。