力の限りめちゃくちゃに走るけれど、あっちは複数の上にこの街の住人だ。
土地勘など全くない桜は、すぐに暗い路地に追い詰められ、左右をふさがれてしまった。
ハアハアと荒い息をつきながら、恐怖におののく手をぎゅっと握りしめる。
じりじりと左右から複数の男に迫られ、ついに彼らが手に持った武器を振り上げて桜にとどめをさそうとした。
―――いやっ!
目を閉じて思わずしゃがみこみ、両腕で頭をかばおうとしたその時。
『―― -―!!』
野太い男の声が、彼らの動きを止めた。
まったく言葉の分からない桜はそれが分からず、まだ縮こまっている。
けれど、自分を襲うはずの激痛がまったく降ってこないので、こわごわと顔をあげた。
