デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

次の日。
出来たら今日は深宮に行きたくなかったが、お昼過ぎにカナンが迎えに来た。

「我が君のお召だ。行こう」

「………うん」

目を伏せて、無理やり笑顔を作る桜の様子に、カナンは眉をひそめた。

「何か、あったのか?」

「ううん……寝不足なだけだよ」

素直な代わりに、嘘が下手な娘だ。



のろのろと、足が進まない。それでもカナンは根気よく付き合った。

渡り廊下も中ほどまで過ぎたとき、ピタリと桜の足が止まった。

「…ねえ、カナン。カナンは、私に耳に心地のいいことばっかり言わないよね?いつも本当のこと、言ってね」

うつむいて、泣きそうな表情だ。

「お前、本当に変だぞ。どうした」

そっと、側に寄る。昨日のあの別れ際の笑顔とは、全く違う。

「大丈夫、私が勝手に落ち込んでるだけなの。…何でかは、自分でも分からないんだけど…」

「………」

「ね、カナン、約束して。本当のことしか言わないって。私、宮中でこうやって話せるの、カナンだけだから」

「我が君もいらっしゃるではないか。こんな最強の味方はないぞ」

桜の顔をのぞき込むと、目線をそらして押し黙った。

(……我が君の事か)

それだけはピンと来た。

「……いまさら、お前に隠しだてなんかしない。散々罵りあったし、私の汚い部分も全部お前に知られている。お前に耳に心地のいい事を言ったところで、何の得になる」

わざと、突き放すように言った。

すると、桜がやっと顔を上げて小さく笑った。

「ふふ…そうだね。カナンは、そんなに優しくなかったね」