デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「……………」

(はあ……バカみたい)

カラン、と箸を置いた。

(辛いとき、誰かが側にいるのかなんて、私が考えなくたって、あの薄紅女官さんが言うようにたくさんいるんじゃない。自分で好みの適当な女の人、捕まえてるんだ)

“長く生きてきた中で、こんなことは、初めてだ”

そう言ってくれてたから、思い上がっていたのだ、と桜は思った。

私が王様の知らない世界の人間だから、どこか特別視されてるんじゃないかと。

“素直に話してほしい”という言葉も、手探りの謝罪も、そっと握った手も、心からの微笑みだと思った表情も、全部。

きっと、特別なんかじゃなくて、王様の【公平な優しさ】が生み出した、私向けのリップサービスみたいなものなんだろう。きっと。

(そりゃそうか。……長く生きていれば、その人が一番喜ぶ事くらい、経験上言えるよね……)

頭では納得してるのに、どうしてこんなにがっかりしてるんだろう。

呼ばれもしないのに深宮までのこのこ押しかけて……重いよね。

(きっと、今夜もたくさんの女の人が、王様を望んでるんだ。全然、独りぼっちじゃないんだな)

良かったという思いとは裏腹に、なぜか泣きたくなった。