「あ…の…私は外国人ですけど、皆さんに危害は」
おずおずと口を開くと、群衆の中から、数人の女性の悲鳴。
やっぱり、私を怖がってる。
恐怖、嫌悪。
刺さるような無数の目線に耐えていると、一番前の男性が桜を指さし、何事か叫んだ。
それにまたわからない言葉で応えて、ばらばらと数人の男が指をさした男性の元に集まってくる。
手にはおのおの、棒や包丁のような武器を持ってきていた。
そして、険しい表情でじりじりと桜に迫ってくる。
「え…え!?」
訳が分からないが、決して好意的ではないばかりか、自分を暴行するか捕まえるかするつもりだとさとった桜は、思わず一歩、二歩と後ずさった。
それを合図にするように、一斉に彼らが襲いかかってきた。
「きゃ…!」
弾かれたように、彼女も駆けだした。人の波を破り、狭い路地をただひたすらに。
