声をはりあげ、客を呼んでいた中年の女性はひょいと桜のほうを向いた。
と、目を見開いて、ぽかんと口を開ける。
「すみません、私、言葉わからないんです。どこか、保護してくれる場所」
身振り手振りで言いたいことをつたえようとした桜だが、その言葉はさえぎられた。
パン売りの女性の悲鳴が、開けられた口から飛び出したからだ。
「えっ!?」
桜が驚いて目を丸くするのと同時に、通りの人々が一斉に彼女を見た。
皆一様に驚き、そして―恐怖のような眼差しを向けている。
ザザザッと桜の周りから人がいなくなり、遠巻きにしているが、桜は傷つくよりも戸惑っていた。
「な…なに…」
外国人がそんなに珍しいのだろうか。それともここの価値観では、私の外見が元の世界以上にひどいと思われているのだろうか。
