デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

今日、王から教えてもらったのは、『魔』についてだった。

黒髪黒い瞳を持つ、人の肉を食らう残酷な魔性。

ここでやっと、桜はこの世界でなぜ自分が恐ろしい目で見られたのかがわかった。

「なるほど……確かにパニックになりますね」

キトニの街に最初に降り立ったときの、街の人間の様子を思い出した。

「彼らが住まうのは地下世界なのだが、少々この表現は正確でなくてな」

王が話を続けた。

実際に『魔』が地面の下に国を築いているわけではなく、異空間にそれはある。
この世界と『魔』の世界を結ぶのは【地下の門】と呼ばれるもので、地上にいくつか点在しているのだ。
そこから、彼らは狩りにやって来る。

「あの…じゃあ、神力とかで、その門をふさげないんでしょうか」

桜が聞くと、軽く王が頭を振った。

「何百年とその試みはなされてきているが…いまだに実現できていない。…もうここまでくると、神の思し召しなのかと思う。我らへの戒めとして、そしてこの世界に人の子があふれないようにするための」

「……」

「ま、だからといって、あ奴らに私の愛する国民をむざむざ狩らせたくはないからな。取りうる策は講じている」

「そういえば、アスナイさんが言ってました。地下の門がある地方のほうが、優秀な武官さんが多いと」

その言葉に、きれいな微笑みをうかべて頷く。

「そうだ。王都はこの世界で一番安全な場所だからな。地下の門もないし、何より神児がいる」