デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

深宮の入り口に着くと、珍しいことに王が出ていた。

「我が君、何故……」

慌ててカナンが駆け寄った。

「何となく、不安でな。本当に桜が来てくれるかどうか」

ふわりと笑ってそう言うと、桜を手招きした。

「桜。部屋へ参ろう」

「あ…はい。えと……じゃあ、また後でね、カナン」

王の驚きの表情を見て取り、何となく気恥ずかしかったが、

「ああ」

短く返事をして王に一礼し、その場を離れた。

部屋へ向かいながら、

「……驚いたな。そなた、如何にして」

桜を振り返って尋ねた。 

「カナンが、許してくれたからです」

「その、言葉は?」

「わたしとカナンさ…カナンは、同じ17歳だったので。敬語をやめてもらいました。私がお願いして。友達ができたみたいで、嬉しいです」

ふふ、と笑う桜を、王は目を細めて見つめた。

なぜか寂しいような、傷ついたような、不思議な感情が胸に広がる。
キリ、と胃のあたりがわずかに痛んだ。

“また後でね、カナン”

恐らく自分には絶対に言わないであろう、親しげな言葉。

二人のわだかまりがなくなって喜ぶべきなのに、王の表情は冴えなかった。